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2010-02-20(Sat)

FF13 夕景

何もない荒野。
魔物たちが走り、戦う、そのざわついた空気だけが、生命の存在を感じさせる。
だが、そこに在るのは本能のみ。
人間だけが持つと言われる理性の存在は、皆無だ。

―――私たち人間は、本当にこの大地で生き抜くことができるのか。

600年前には確かにこの大地に生きる者たちがいた。
その痕跡もあった。
だが・・・・・・


「エクレール姉さん」
高い崖の上からアルカキルティ大平原を見下ろしていたライトニングの思考を遮ったのは、愛しい妹のセラだった。
「姉さん、一人で出歩いたら危ないわ」
そう言ったセラ自身、一人でライトニングの元にやってきた。
「お前こそ……」
だが、そう言いかけて、ライトニングは視界の端に臥体のいい男の影を捉えた。
「なんだ。すぐそこまでダンナが一緒に来ていたのか」
「うん。一緒に姉さんを探してくれたの」
ライトニングに遠慮しているのか、スノウは少し離れた岩陰からこちらを窺っている。


コクーンがその機能を失い、人々がパルスに降り立ってから1年。
セラとスノウは結婚した。
パルスでは盛大な式を挙げられるはずもなく、数人の仲間とささやかな宴を設けただけの質素な結婚式だった。
コクーンで何不自由無く暮らしていた頃であれば、盛大な式を挙げることができただろう。
純白のドレスに宝石をあしらったティアラ。長めのベールが花嫁のシルエットを美しく浮かび上がらせて。そしてそんな衣装よりも輝かしいセラの幸せいっぱいの微笑(えみ)が列席者を魅了する………。
そこまで考えて、ライトニングはセラの笑顔が向けられる相手に思い至り、不快感を覚えた。
「姉さん?」
僅かにしかめた表情に気づいたセラが、ライトニングの顔をのぞき込んだ。
「ああ、悪い、セラ。ちょっと考え事をしていた」
言いながら、ライトニングは視線をセラから外し、巨大な廃墟を支えるクリスタルの柱を見据えた。
「ヴァニラとファングさんにも、私たちの結婚式に来てもらいたかったな」
セラがライトニングの視線の先を追い、その見つめるところに眠る人に思いを馳せた。
セラはファングを知らない。
だが、ヴァニラには臨海都市ボーダムで出会っていた。
ルシである自分と普通に接してくれたヴァニラ。
しきりに謝っていたのはヴァニラが自分に怪我をさせたからだと思っていたけれど、もっと深い意味があったのだということは、姉とスノウにパルスに来てから聞かされた。

「お前はヴァニラを恨んでいないのか?」
ライトニングは以前から気になっていたことを妹に問うた。
ヴァニラとファングの話をセラに聞かせた時には、セラはその事実を受け入れるだけで精一杯だったのだ。
話をしてから1年近く。
この問に答えられるだけの余裕ができてもいい頃だ。
果たしてセラはこう答えた。

「恨んでなんて、ないよ」

セラはコクーンを支えるクリスタルを見つめて、言葉を続けた。
「私がルシになるきっかけを作ったのがヴァニラだったとしても、クリスタルになった私を助けてくれたのもヴァニラだもの。そしてコクーン市民の命を救ってくれたのも……」

セラの答えを予期していたとは言え、ライトニングは胸のつかえが落ちたように感じ、
「そうだな」
ただ短く、そう言った。


パルスを恐れ、パルスの民であるヴァニラとファングを良く思わない人々が、今でも二人が眠るクリスタルを呪いの象徴であると嫌悪する。
コクーンという箱庭で飼い慣らされた人々は、この過酷な環境に置かれたことで、反乱者であるライトニング達を、特にパルスの民であるヴァニラとファングを憎んでいた。
彼らがいなければ、人々はある日突然、生命(いのち)を失っていたはずであるのに。
だがライトニングもスノウも、勿論サッズもホープも、そんなことは気にも留めていなかった。寧ろ恨みや憎しみの感情は、生きているからこそ生まれるのだと、笑って受け流している。



パルスの大地に沈みかけた陽が、クリスタルを赤く染め始めた。
「そろそろ戻らねぇと、魔物が起きだしてくるぜ」
岩陰からスノウが二人に帰還を促す。
「ああ。戻ろうか」
スノウに返事をし、セラの背を軽く押して、ライトニングは踵を返す。
が、ふと歩みを止めて、肩越しにクリスタルの柱を顧みた。
「早く目覚めろ、ヴァニラ、ファング。600年も待ってやらないぞ。私は気が短いんだ。」
そんなライトニングに応えるかのように、クリスタルが沈みゆく太陽の光を反射させた。
「眩しいな。だがそれが返事なのだな」
二人が眠り続けることを拒んでいるのだと、ライトニングは思いたかった。
―――無理矢理にでも、目覚めさせてやるからな……。
心の中で叫びながら、ライトニングは歩き出した。
背中に赤い陽の重みを感じながら。


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2010.02.20 コルダの月日を書くつもりが、何故かFF13になってしまったという謎
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